高年齢者雇用について企業が注意すべきポイントとは?

はじめに

高齢者雇用をめぐる社会状況

近年わが国では、少子高齢化が急速に進行して人口が減少しており、今後もその傾向が変わることは無さそうです。

そのような環境下で、経済社会の活力を維持するためには、働く意欲がある高年齢者が年齢にかかわりなくその能力を十分に発揮でき、活躍できる環境整備を図ることが必要です。

他方で、働く意欲や能力は、労働者ごとに千差万別であり、企業としては、法令を正しく理解し、多くの有為な人材に活躍していただきたいところです。

高年齢者雇用安定法の改正ポイント

高年齢者雇用安定法については、数次の改正が重ねられ、高齢者の雇用継続のため、企業に様々な義務が課されてきました。

(1)平成6年改正のポイント

①定年を定める場合には、60歳を下回ることができない

(2)平成16年改正のポイント

①に加え、

②65歳未満の定年を定めている事業主は以下のいずれかの措置を導入しなければならない

一 当該定年の引き上げ

二 継続雇用制度の導入(継続雇用制度の対象となる高年齢者の基準を定めることが可能)

三 当該定年の定めの廃止

(3)平成24年改正のポイント

②、二の高年齢者の基準を定めることができなくなり、原則として希望者は継続雇用しなければならなくなった。

(4)令和3年改正のポイント

上記の65歳までの雇用確保義務に加え、

以下のいずれかの措置を講ずる努力義務を新設。

①70歳までの定年引き上げ

②定年制の廃止

③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 (特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)

④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

高齢者雇用について企業が注意すべきポイント

①継続雇用後の労働条件について

継続雇用後については、業務内容が変更さたり、定年前よりも労働条件が引き下げられる場合が多いようです。

もっとも、無制限な業務内容の変更や労働条件の引き下げが認められるわけではありません。

例えば、定年前は事務職に従事していた労働者について、清掃などの単純労働を提示したことが違法であると判断された事例(名古屋高裁平成28年9月28日判決)、業務内容に大きな変更が無い一方で、月収が75%減少するという労働条件の引き下げが違法であると判断された事例(福岡高裁平成29年9月7日判決)などがあります。

他方で、業務内容には変更が無いが、年収が20%程度減少し、住宅手当及び家族手当を不支給とする労働条件の引き下げについて違法では無いとした事例もあります(最高裁平成30年6月1日)。この裁判例は、いわゆる「同一労働・同一賃金」に関する著名な最高裁判決(長澤運輸事件)であり、今後、定年後の労働条件引き下げについては、「同一労働・同一賃金」の問題として議論されるものと予想されます。

②義務化されているのは65歳までの雇用確保義務です

令和3年改正は努力義務であるため、企業ごとの実態に応じて可能な範囲で実施すれば足ります。

70歳までの雇用確保は、必ずしも実施しなくても構いません。

③貴社の高齢者雇用ルールの明確化とルールに則った運用をおこなう必要があります

企業によっては、65歳までの雇用確保のためのルールは定めているものの、そのとおりに運用されていない場合があります。

例えば、就業規則により65歳までの継続雇用制度を設け、1年ごとに更新する旨を定めているにもかかわらず、更新の手続きが行われていなかったり、人によって65歳を超えてもそのまま勤務を続けさせているようなケースも見られます。

このような状態を放置すると、無期転換権を行使されたり、雇止めについて異議が述べられるなど、労使間のトラブルに発展する可能性があります。

④必要に応じて有期雇用特別措置法の第二種計画認定を受けましょう

有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込により、期間の定めのない労働契約に転換できるものとされています。

但し、定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者については、有期雇用特別措置法の第二種計画認定を受けることで、無期転換申込権が発生しないとする特例が設けられています。

定年後、5年を超えて有期労働契約が更新される可能性がある場合、第二種計画認定を受けておかなければ、70歳を超えてから無期転換権を行使される可能性があります。

当事務所がお手伝いできること

当事務所では、企業からの労働問題のご相談を幅広くお受けしており、高年齢者の雇用確保措置に関するご相談、労働条件に関するご相談、制度運用に関するご相談、従業員への説明会の実施、第二種計画認定についてのご相談などをお受けしております。

法令を遵守し、有為な人材に活躍の場を与え、企業活動を活性化させるお手伝いをいたします。

是非、お気軽にご相談ください。

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藤本 尊載

藤本 尊載

玉藻総合法律事務所代表弁護士。企業側の弁護士として多数の顧問先を持つ。労務問題をはじめとした企業の法的トラブルに精通。他士業に向けたセミナー講師も務める。

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