インターネット上の誹謗中傷に対して権利侵害を立証し、発信者を特定できた事例
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お問い合わせの経緯
インターネット上の匿名掲示板に,依頼者に関するスレッドが立てられ,依頼者の職員や依頼者を誹謗中傷する投稿がなされていました。
ご相談内容
依頼者は,なにより投稿者を知りたいとのご意向をお持ちでした。そのため,投稿内容を確認し,名誉棄損が明らかと思われる最新の投稿について,発信者情報開示請求をご依頼いただきました。
弁護士の対応
発信者情報開示手続きは,まず①コンテンツプロバイダ(webサイトで情報コンテンツを提供する事業者をいいます。本件では匿名掲示板がこれにあたります。)からIPアドレス・タイムスタンプ等の開示を受け,つぎに②IPアドレスからアクセスプロバイダ(ユーザーにインターネット接続サービスを提供する事業者をいいます。)を割り出した後,アクセスプロバイダへ発信者の氏名・住所等の開示請求を行う,という2段階の請求が基本となります。
ただし,一般的なアクセスプロバイダは,数か月程度しか通信ログを保存しませんので,早期に対処しなければ特定できなくなります。
そこで直ちに,匿名掲示板に対して弁護士名で任意の開示請求を行ったところ,IPアドレス等の開示を受けることができました。
続けて,IPアドレスから特定できたアクセスプロバイダへ,2度目の開示請求を行いました。ところが,同プロバイダからは発信者情報として,別のアクセスプロバイダの情報が開示されました(このように複数のアクセスプロバイダが経由されていることもあります。)。
そこで,開示されたプロバイダに対して3度目の開示請求を行いました。これに対し,同プロバイダから,訴訟外では開示できないが,指定期限までに訴訟提起があった場合には,訴訟が終了するまで発信者情報を保存しておく,との回答を受けました。
そのため,同プロバイダの本店所在地である東京の裁判所に対し,発信者情報開示請求訴訟を提起しました。
訴訟において問題の投稿による権利侵害が明白であることを立証した結果,開示を命じる判決を得ることができ,その後,同プロバイダから発信者の氏名・住所・メールアドレス等が開示されました。
弁護士の所感
近年,インターネット上の誹謗中傷がクローズアップされていますが,個人に対するものだけでなく,企業に対する誹謗中傷も大きな問題です。
企業イメージの悪化や,人材採用の困難化といった深刻な影響を及ぼしかねません。
このような投稿への対処方法としては,削除又は投稿者の特定といった方法がありますが,表現の自由との兼ね合いもあるため,容易なことではありません。
投稿の内容・形式は様々であり,開示請求に対するプロバイダの対応も一様ではないため,事案に応じて適切な対処方法を選択しながら進めなければなりません。また,通信ログが消去されてしまうと特定不可能となりますので,この点も踏まえた対処が必要となります。
他方,発信者情報開示に関する法改正もあり,2022年の秋ごろまでに施行される見込みです。この法改正で新たな開示手続きが設けられ,投稿者特定の迅速化が期待されています。
インターネット上の誹謗中傷についてお悩みの方は,是非一度,当事務所にご相談ください。
藤本 尊載
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