多額の未払い賃金の請求に対し、大幅な減額を獲得した事例
企業概要
運送業 従業員100~150名
お問い合わせの経緯
運送業を営む事業者からのご依頼でした。
同時に複数のドライバーから弁護士を通じて多額の未払い賃金を請求されたため、顧問の社会保険労務士の先生を通じて、当事務所にご相談に来られました。
相談内容
在籍中である複数の従業員から同時に未払い賃金請求を受けており、その合計額は1000万円を優に超えていました。
依頼者としては、従前より賃金規程に則った適正な賃金を支払っていたと認識しており、納得しがたいとのことで、ご依頼をいただきました。
弁護士の対応
弁護士がヒアリングを行い、依頼者の就業規則や労働条件通知書、デジタルタコグラフ等の資料を見て問題を整理しました。
依頼者の支給していた額は、一般的なドライバーの賃金水準より高く、額だけみれば十分なものといえました。しかし、時間外手当(固定残業代)の規定に解釈の余地があったことから相手方との間で見解の相違が産まれていました。
また、相手方が主張する各人の労働時間が過大に算定されていたため、この点の検証も必要でした。
そこで、弁護士は、膨大な資料を検討して正確な労働時間を算出するとともに、多数の裁判例等を検討したうえで、未払い賃金は存在しないとの立場から可能な限りの反論を行いました。
その後、相手方の申立てにより労働審判に移行しましたが、弁護士は入念な準備を行ったうえで答弁書及び証拠を提出し、第1回期日において当方の考えを積極的に主張しました。
その結果、2回目の期日で和解が成立し、当初請求額の約3分の1まで減額することに成功しました。
弁護士の所感
十分な水準の給与を支払っていた場合であっても、その算出根拠に法的な問題があった場合、思いもよらず多額の未払い賃金請求を受けてしまう危険性があります。
特に固定残業代を導入している法人では、その規定が無効とされると、固定残業代として支払っていた賃金も基礎賃金に算入されてしまい、そこに割増賃金が上乗せされるため、金額が膨大なものとなってしまいます。
このようなリスクを低減するには、就業規則(賃金規程)を整備し、労働時間を適正に把握しておくことが大事です。
2020年4月以降に発生する賃金請求権の時効期間は3年に延長され、将来的には5年となることが予定されています。また、2023年4月からは、中小企業でも月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%に引き上げられます。
このような状況に鑑みると、今後さらに未払い賃金請求は増加すると思われますので、現在、請求を受けていないとしても、問題が生じる前に対策をとってくことが重要です。
また、すでに未払い賃金請求を受けている場合であっても、簡単にあきらめる必要はありません。
固定残業代や未払い賃金請求でお悩みの方は 是非当事務所にご相談ください。
石垣紀彦
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- 多額の未払い賃金の請求に対し、大幅な減額を獲得した事例 - 6月 2, 2022