賃料回収
「賃料の支払いがすこしずつ遅れて、延滞賃料の総額が多額になっている」
「賃料を支払うように何度も催促をしているが、支払ってもらえない」
「何度も連絡しているうちに、電話にも出なくなってしまった」
賃貸経営を行う不動産オーナーにとって、賃貸物件の借主から確実に賃料を回収することは極めて重要な問題です。賃料の延滞は、オーナーの財務状況にマイナスであるだけでなく、賃料を延滞する借主は往々にしてマナーも悪いため、他の借主にも迷惑をかける場合があります。
不動産の賃料回収問題の特徴として、有効な対策を取らなければ、未収額が確実に増加していくという点があります。たとえ1ヶ月分の滞納であっても、オーナー側から適切な措置を講じなければ、その後滞納額が増加する可能性は高いといえます。
よって、不動産の賃料回収においては、滞納初期の段階で適切に対応し、その後の未収額を増大させないことが必要です。たとえ1ヶ月でも賃料が滞納されてしまった場合には、借主の状況にもよりますが、毅然とした対応が必要です。甘い対応をしていると、借主は滞納への抵抗が薄らいで、その後も滞納を繰り返す可能性があります。
賃料滞納が発生した場合、回収のための手段として、以下のようなものがあります。
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1)内容証明郵便による催告
賃料不払いが発生し、電話や訪問による催促に対して誠意ある対応が無い場合、借主に対して内容証明郵便を送付し、賃料の支払いを求めます。弁護士名を記載した内容証明郵便によって支払いを催告することで、借主側に支払いが必要であることをきちんと認識・自覚してもらうことができます。
また、賃貸借契約を解除する場合には、原則として、賃料支払いの催告が必要とされており、内容証明郵便を送付することで、賃料支払いの催告を行ったことを証明することができます。
2)連帯保証人に請求する
借主から賃料が支払われない場合には、連帯保証人に対して賃料を請求します。
連帯保証人は、賃貸借契約から生じる借主の義務について連帯して責任を負いますので、賃料の支払い義務を負います。また、連帯して責任を負うというのは、まずは借主に対して請求するよう主張することができないという意味を含みます。
なお、特に滞納期間が長期化している案件によくみられますが、未払い賃料を連帯保証人に請求した際、そのような長期間の未払いを放置した責任が貸主にある旨の主張がなされることがあります。裁判例上、継続的保証における予想の範囲を超える滞納賃料については、連帯保証人は支払義務を免れる場合があるものとされており、不動産オーナーとしては、滞納賃料額が多額になる前に、適切に連帯保証人に対して賃料の請求を行う必要があります。
3)公正証書や訴え提起前の和解の利用
賃貸借契約を解除しないまでも、今後も賃料の滞納が繰り返される懸念がある事案においては、公正証書の作成や、訴え提起前の和解を利用することを検討します。
公正証書は公証人が作成する公文書であり、金銭の支払いを目的とする請求については、強制執行認諾条項を盛り込んだ公正証書を作成することで、不履行の場合に、訴訟手続き等を経ることなく強制執行を行うことが可能となります。
しかし、公正証書では建物の明け渡しについては執行力が認められないので、将来、建物の明け渡しについての執行力も得ておきたい場合には訴え提起前の和解を利用することを検討します。但し、この訴え提起前の和解手続を利用するためには、和解条項について双方が合意する前提で、当事者双方が裁判所に出頭することが必要となります。
4)支払督促、少額訴訟、民事訴訟を提起する
滞納賃料の任意の支払が期待できない場合は、比較的簡単に未払い賃料についての強制執行を可能にする債務名義を得るための支払督促手続の利用や、60万円以下の賃料の支払いを請求する少額訴訟の提起、または通常訴訟の提起を検討します。少額訴訟は、1回の期日で審理を終えて判決することを原則とする手続ですが、同じ裁判所での利用は年間10回までに制限されています。
このような法的措置を講ずれば、相手方の財産を差し押さえる「強制執行」などの法的措置を取ることが可能となります。
5)明渡請求を行う
賃料の回収が不可能だと判断される場合には、契約を解除し、明渡請求を行います。明け渡し請求は正しい手続きに則って行うことが必要です。例えば、「賃借人が賃料を滞納した場合、賃借人の承諾を得ずに物件内に立ち入ることができ、適当な処置を講ずることができる。」などという、いわゆる自力救済条項が契約書に盛り込まれている場合であっても、このような特約は公序良俗に反するものとして無効とされます。このような自力救済条項に基づいて物件内に立ち入り、ドアに施錠した事案においては、管理会社に損害賠償が命じられました。明け渡し手続は弁護士のアドバイスに従って、慎重に進める必要があります。
弁護士に依頼をしていただくことで、借主との交渉はもちろんのこと、書類の作成や法的な手続きの代行を行うことができます。弁護士が交渉にあたることで、借主が重大さを認識し、支払いに応じる場合もあります。
賃料の滞納が発生した場合は、お早めにご相談下さい。
藤本 尊載
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