公益通報者保護法について

1 公益通報者保護法とは

公益通報者保護法は、労働者が公益のために通報を行ったことを理由として、解雇等の不利益な取り扱いを受けることがないよう、どこへどのような通報を行えば保護されるのかという、制度的なルールを明確にするものです。

 

2 公益通報とは

・労働者(公務員も含む)が ※令和2年改正により、退職者(退職後1年以内)及び役員を追加

・不正の目的ではなく

・労働提供先等について

・通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を

・通報先に通報すること

 

3 通報先と保護されるための要件

①事業者内部

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料すること

②行政機関

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとすると信ずるに足りる相当の理由があること(単なる憶測や伝聞等ではなく、通報内容が真実であることを裏付ける証拠や関係者による信用性の高い供述など、相当の根拠が必要)

※令和2年改正により、通報者の氏名等を記載した書面を提出する場合の通報を追加

③その他の事業者外部

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとすると信ずるに足りる相当の理由があること(単なる憶測や伝聞等ではなく、通報内容が真実であることを裏付ける証拠や関係者による信用性の高い供述など、相当の根拠が必要)

に加え、次のいずれか一つに該当すること

(イ)事業者内部(労務提供先等)又は行政機関に公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合 (例)以前、同僚が内部通報したところ、それを理由として解雇された例がある場合

(ロ)事業者内部(労務提供先等)に公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合 (例)事業者ぐるみで法令違反が行われている場合

(ハ)労務提供先から事業者内部(労務提供先等)又は行政機関に公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された 場合 (例)誰にも言わないように上司から口止めされた場合

(ニ)書面(紙文書以外に、電子メールなど電子媒体への表示も含む)により事業者内部(労務提供先等)に公益通報をした日から 20 日を経過しても、当該通報対象事実について、当該労務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は 当該労務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合 (例)勤務先に書面で通報して20日を経過しても何の連絡もない場合

(ホ)個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合 (例)安全規制に違反して健康被害が発生する急迫した危険のある食品が消費者に販売されている場合

※令和2年改正により、財産に対する損害(回復困難又は重大なもの)、通報者を特定させる情報が漏れる可能性が高い場合を追加

 

4 保護の内容

①解雇の無効

公益通報をしたことを理由として事業者(公益通報者を使用する事業者)が 公益通報者に対して行った解雇は無効

②解雇以外の不利益な取扱いの禁止

公益通報をしたことを理由として事業者(公益通報者を使用する事業者)が 公益通報者に対して不利益な取扱いをすることも禁止

③労働者派遣契約の解除の無効等

派遣労働者が公益通報をしたことを理由として、①派遣先が行った労働者派遣契約の解除は無効であり、②派遣先が派遣元に派遣労働者の交代を求めること等、公益通報者に対して不利益な取扱いをすることも禁止

④公務員に対する取扱い

公務員についても、公益通報を理由とする不利益な取扱いが禁止

 

5 企業が取るべき対応

内部通報体制の整備

令和2年改正により、民間事業者に、内部通報体制の整備(窓口設定、調査、是正措置等)が義務付けられました。

従業員数300人以下の事業者については努力義務とされていますが、社内に相談すべき窓口がなければ、行政機関やマスコミ等に通報せざるを得なくなります。

企業の自浄作用を機能させるためにも、相談しやすい窓口を設置するとともに、労働者が安心して相談できる体制を整備する必要があります。

労働者からの通報、相談があった場合の対応

公益通報者保護法に則り、解雇等の不利益取り扱いをしないことはもちろん、放置することなく、調査、是正措置等を実施する必要があります。

 

当事務所では、内部通報窓口の設置及び整備、労働者からの通報への対応などについてご助言を行っております。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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藤本 尊載

玉藻総合法律事務所代表弁護士。企業側の弁護士として多数の顧問先を持つ。労務問題をはじめとした企業の法的トラブルに精通。他士業に向けたセミナー講師も務める。

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