健康食品の広告規制~薬機法等の規制内容を弁護士が解説~

近年、健康志向が高まるとともに、数多くの健康食品が販売され、健康食品のテレビCMやインターネット広告もあふれていますが、それに伴って健康食品の広告に対する法律上の規制も強化されています。

そこで、本記事では、そのような健康食品の広告規制についてご紹介します。

1 健康食品とは

「健康食品」という言葉は法律上定義された言葉ではありません。

一般に、健康の維持・増進に効果のあることをうたって販売される食品全般を指して、「健康食品」といいます。

ただ、そのような健康食品の中で、どのような効能効果を表示できるかにより、「特別用途食品」と「保健機能食品」という法律上の分類が存在し、さらに「保健機能食品」は、「特定保健用食品(いわゆるトクホ)」、「機能性表示食品」、「栄養機能食品」に分類されています。

上記のいずれにも該当しない食品は、一般健康食品ということになります。

 

2 関係する法令

健康食品の表示に関係する法令は多く、薬機法(医薬品医療機器等法)、健康増進法、食品表示法、食品衛生法、景品表示法、消費者契約法、特定商取引法、不正競争防止法、独占禁止法などの法令があります。

薬機法では、医薬品的な効能効果の表示が規制されており、健康増進法では健康保持増進効果等についての虚偽・誇大広告が禁止されています。

また、食品であることから、食品表示法や食品衛生法の規制を受けますし、当然、景品表示法や、消費者契約法や特定商取引法の規制が及びます。

このように規制内容は多彩ですが、次項からは、健康食品特有の規制内容について簡単にご紹介します。

 

3 規制内容

(1)効能効果について

ア 医薬品該当性

まず、当然のことながら、健康食品は医薬品ではありません。

したがって、「医薬品的な効能効果」を標ぼうすることはできません。

医薬品的な効能効果とは、簡単に言えば、疾病の治療・予防や身体機能の増強・増進を目的とする表現のことをいいます。

具体的には「ガンに効く」「高血圧の改善」「生活習慣病の予防」「動脈硬化を防ぐ」「疲労回復」「老化防止」「血液を浄化する」といった表示がこれに該当し、このような効能効果を表示するものは、医薬品とみなされます(昭和46年6月1日薬発476号厚生省薬務局長通知)。

医薬品としての承認を受けずにこのような表示をした場合、薬機法が禁じる未承認医薬品の広告(薬機法68条)や、無許可での医薬品販売(薬機法24条1項)に該当し、未承認医薬品の広告では2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金(又はこれを併科)(薬機法85条5号)、無許可での医薬品販売では3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金(又はこれを併科)となります(薬機法84条9号)。

イ 保健機能食品

また、「保健機能食品」では表示のルールが定められており、それぞれ以下に述べるような許可や届出等を行う必要があります。

「特定保健用食品」は、疾病リスクの低減や特定の保健用途に適する表示(「おなかの調子を整える」「コレステロールの吸収を抑える」等)をすることができますが、国から個別の許可を得ることが必要とされています。

つぎに、「機能性表示食品」では、特定の成分が体調などの維持改善に役立つ旨の表示が可能です(「本品には○○が含まれるので○○の機能があります」等)。トクホと異なり個別の許可は必要ありませんが、販売前に安全性及び機能性などに関する情報を消費者庁長官へ届け出る必要があります。

そして、「栄養機能食品」は栄養成分の機能を表示することが出来ますが、食品表示基準に定められた規格基準に従って表示を行う必要があります(「カリウムは正常な血圧を保つのに必要な栄養素です。」等)。

 

(2)虚偽・誇大広告の禁止

ア 健康増進法は、健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する表示又は著しく人を誤認させる表示(いわゆる虚偽・誇大広告)を禁止しています(健康増進法65条1項)。

「健康保持増進効果等」の詳しい説明は割愛しますが、ガイドラインに定義があり、具体例としては「末期がんが治る」「疲労回復」「おなかの調子を整える」「カルシウム〇㎎配合」「カロリー〇%オフ」等がこれに該当します。

イ 「著しく事実に相違する表示、著しく人を誤認させる表示」であるか否かは、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識を基準に判断されます。

「著しく」とは、誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている程度を超えていることを指します。

また、「事実に相違する」とは、例えば、十分な実験結果等の根拠が存在しないにもかかわらず、「3か月間で○キログラムやせることが実証されています。」と表示する場合がこれにあたります。

そして、「人を誤認させる」とは、食品等の広告その他の表示から認識する「印象」や「期待感」と、実際の効果に相違があることをいいます。なお、現実に消費者が「誤認」した結果は必要とされません。

ウ また、健康増進法における、虚偽・誇大広告禁止規制の特色は、「何人も」規制の対象とされている点にあります。

したがって、規制の対象には、食品の製造業者や販売業者だけではなく、新聞やテレビなどの広告媒体、広告代理店、アフィリエイターなども含まれています(とはいえ、第一義的な責任は食品の製造業者や販売業者にあると考えられています。)。

エ 違反に対する措置

健康増進法に違反する虚偽誇大広告に対しては、消費者庁長官及び都道府県知事等により、必要な措置をとるべき旨の勧告及び命令などが規定されています(66条)。

 

4 具体的事例

(1)薬機法

医薬品該当性の例として、最高裁昭和63年4月15日判決を紹介します。

この事案は、「ビバ・ナチュラル」という海藻エキスを主成分とする製品を販売するにあたって、「高血圧、動脈硬化、肝臓疾患に非常に効果がある」旨のポスターや、これらの疾患・症状に対する薬理作用を示す「治験例集計紙」を添付するなどしていたもので、これを「医薬品の無許可販売」に該当する(薬事法84条5号(現薬機法84条9号))としています。

この事案では、使用目的・効能効果を宣伝用のポスターで行っており、製品自体には「健康食品」「薬ではない」という記載をしていましたが、販売時の演術宣伝内容を総合して医薬品に該当すると判断されました。

(2)健康増進法

健康増進法の事例としては、平成28年3月1日の勧告があります。

これは特定保健用食品である「トマト酢生活」という商品において、許可された表示が「本品は食酢の主成分である酢酸を含んでおり、血圧が高めの方に適した食品です。」であったにもかかわらず、「臨床試験で実証済み!これだけ違う、驚きの「血圧低下作用」」、「毎日、おいしく血圧対策」、「薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい、そんな方々をサポートしようトライオンが開発した「トマト酢生活」」などと記載していた事案です。

この記載について、あたかも血圧を下げる効果があると表示することについて消費者庁長官から許可を受けているかのように示し、また、薬物治療によることなく、本品を摂取するだけで高血圧を改善する効果を得られるかのように示す表示をしていたとして、消費者庁が再発防止策等の勧告を行いました。

 

5 まとめ

今回は、健康食品に関する広告規制の一端をご紹介しました。

広告については様々な規制があり、法令に加えて指針(ガイドライン)や通達なども多く存在するため、専門的かつ幅広い知識が必要となる分野です。

そのため、法律の専門家である弁護士に相談すれば、より適切かつ具体的な助言を受けることができるでしょう。

当事務所では、広告に関するご相談を常時受け付けており、内容のチェックやアドバイス等のサービスを提供しております。広告についてお悩みがございましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。

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石垣紀彦 

香川県弁護士会所属。景品表示表示法やインターネット上の誹謗中傷・風評被害、労働問題(使用者・経営者)、損害賠償問題全般などの分野に積極的に取り組む。削除や発信者情報開示、未払い賃金請求の対応など幅広い分野での経験と実績を有する。

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