景品表示法について弁護士が解説
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1 はじめに
自社の商品やサービスを消費者に広く認知してもらうためには、広告は必要不可欠です。
しかし、その広告の内容が、実際の商品等の内容と異なっていたり、誤解を生むものであったりすると、消費者はその商品等の価値を正しく判断して買い物をすることができないため、広告には様々な規制が加えられています。
特に、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法、いわゆる景表法)は広告規制の基本となる法律であり、あらゆる広告を対象としています。
この景表法に違反すると、措置命令や課徴金納付命令などの処分を受けることがあり、その場合は社名や商品名なども公表されてしまいますので、イメージ低下によって当該事業が深刻なダメージを受けることにもなりかねません。
そこで、今回は、広告を出す際に最も注意が必要となる、景品表示法の概要をご説明します。
2 景品表示法の規制の種類
景品表示法は、不当表示規制と景品規制の2種類の規制を内容としています。
このうち、不当表示規制とは、事業者が自己の供給する商品又はサービスを広告するにあたって、その広告における不当な表示を規制するものです。
そして、景品規制とは、事業者が自己の供給する商品又はサービスに付随して提供する物品や金銭その他経済上の利益(景品)が、過大なものとならないよう規制する内容となっています。
3 不当表示規制
(1)優良誤認表示(法5条1号)
「優良誤認表示」とは、自社の商品やサービスの品質等について、①実際のものよりも著しく優良であると示すもの、又は②事実に相違して競争業者のものよりも著しく優良であると示すもの、をいいます。
つまり、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為は、優良誤認表示に該当します。
また、わざと偽った場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても規制対象となりますので、注意が必要です。
不実証広告規制(法7条2項)
ある表示が優良誤認表示の疑いがあるとき、消費者庁は、事業者に対して、期間を定めて合理的根拠を示す資料の提出を求めることができます。
そして、当該期間内に資料を提出しない場合や、提出された資料が表示の合理的根拠を示すものと認められない場合、当該表示は優良誤認表示とされます。
これを「不実証広告規制」といいます。
優良誤認表示の具体例
・店頭看板において「ハイオク」と表示して販売していた自動車ガソリンが、実際は大部分レギュラーガソリンであったというケース(平成24年4月19日措置命令)。
・会報誌において、ある美容機器を使用することにより、細胞の活性化、脂肪分解効果、殺菌効果、肌の汚れの除去効果又は肌への美容成分の浸透効果が得られると認識される表示について、事業者から提出された資料が当該表示の裏付けとなる合理的根拠を示すものとは認められなかったケース(平成24年8月31日措置命令(不実証広告規制))。
・ニコニコ生放送及びYouTubeライブにおいて、あるオンラインゲームの期間限定ガチャで提供される限定モンスター13種全てが2段階進化(究極進化)するかのような発言があったが、実際に2段階進化するのは13種中2種のみであったところ、課徴金5020万円が命じられたケース(平成30年3月28日課徴金納付命令)
(2)有利誤認表示(法5条2号)
「有利誤認表示」とは、自社の商品やサービスの価格や取引条件について、①実際よりも相手方に著しく有利であると誤認させるもの、又は、②競争業者のものよりも相手方に著しく有利であると誤認させるもの、をいいます。
具体的には、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為が有利誤認表示に該当します。
また、わざと偽った場合だけでなく、誤って表示した場合であっても規制対象となります。
二重価格表示
二重価格表示とは、「通常価格1,000円のところ、本日に限って500円!」というような、二つの価格を併記する表示方法です。
このような二重価格表示は、有利誤認表示となりやすいものであるため、特に「価格表示ガイドライン」が定められています。
たとえば、上記の「通常価格1,000円」が実態のない架空の価格だった場合には、有利誤認表示となります。
有利誤認表示の具体例
・テレビCMにおいて、「スーツ・コート・ジャケット全品半額」等と記載して、あたかも店舗で販売されるスーツ・コート・ジャケットの全てが表示価格の半額で販売されるかのように表示していたが、実際は、一定金額以上のスーツ・コート・ジャケットのみ、表示価格の半額で販売されるものであったケース(措置命令日平成23年7月26日)。
・ウェブサイトにおいて、モバイルデータ通信サービスの登録手数料に関して「2,835 円→キャンペーンにより0円」と記載することにより、あたかも、キャンペーンに限り登録手数料が無料であり、通常は登録手数料 2,835 円が必要であるかのように表示していたが、実際は、登録手数料2,835円が必要なものとしてサービスを提供したことはほとんど無かったケース(平成24年6月7日措置命令)。
(3)指定告示(法5条3号)
優良誤認表示や有利誤認表示のほか、以下のようなものが告示により不当表示として指定されています。
①商品の原産国に関する不当な表示
②無果汁の清涼飲料水等についての表示
③消費者信用の融資費用に関する不当な表示
④おとり広告に関する表示
⑤不動産のおとり広告に関する表示
⑥有料老人ホームに関する不当な表示
⑦一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
4 景品規制(法4条)
景品表示法は、消費者の自主的かつ合理的な選択を確保するため、過大な景品類の提供を制限しています。
あまりに豪華な景品が提供されると、消費者が豪華景品につられて合理的な判断ができない状態で商品を購入してしまうおそれがあるため、そのような事態を防止するための規制です。
景品類の提供方法には、「一般懸賞」、「共同懸賞」、「総付景品」があり、それぞれ上限が定められています。
また、業種別に、告示によって独自の規制が設けられている場合があります(業種別景品告示)。
(1)一般懸賞
一般懸賞とは、くじやコンテストの優劣などによって当選した一部の購入者 のみに景品を提供することをいいます。
規制内容は、以下のとおりです(懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(告示))。
・景品最高額
取引価額が5,000円未満の場合は、取引価格の20倍まで
取引価額が5,000円以上の場合は、10万円まで
・景品総額
売上予定総額の2%以内
※売上予定総額は、過去の売上データや事前の市場調査等による予測によって定めることになります。
(2)共同懸賞
共同懸賞とは、一の商店街又は一定地域内の同業者など、相当多数の事業者が共同して行う懸賞で、一般懸賞と同様にくじ等の当選者に景品を提供することをいいます。規制内容は、以下のとおりです。
・景品最高額
30万円
・景品総額
売上予定総額の3%以内
(3)総付景品
総付景品とは、「先着〇名様」とか「全員もれなく」というような、一部の当選者に限定することなく該当者全員に景品を提供することをいいます。
以下の上限が設けられています(一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限(告示))。
・景品最高額
取引価額が1000円未満の場合は、200円まで
取引価額が1000円以上の場合は、取引価額の20%まで
・景品総額
制限なし
(4)具体例
新聞の販売にあたって、景表法に基づく告示制限内の景品を複数個提供していたことから、大阪府が措置命令を行ったケース(令和5年3月30日措置命令)。
5 景表法に違反した場合
(1)措置命令(法7条)
景品表示法に違反して、不当表示や過大な景品の提供が行われた場合、消費者庁や都道府県は、当該行為を行っている事業者に対して、措置命令を出すことができます。
措置命令では、消費者への誤認を排除することや、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないこと等が命じられます。
また、措置命令は、違反行為が無くなった後であっても、することができるとされています。
そして、措置命令の内容は、消費者庁等のウェブサイトで公表されます。
(2)課徴金(法8条)
不当表示については、要件を満たせば、消費者庁から当該行為を行った事業者に対して、課徴金の納付が命じられます。課徴金制度は景品表示法の平成26年11月改正(平成28年4月1日施行)により導入された制度です。
課徴金の金額は、原則として、不当表示が行われた商品またはサービスの売上額の3%とされます。売上に応じて課されるため、課徴金の額が数千万円や数億円に達することもあります。
また、措置命令の場合と同様、その内容は消費者庁のウェブサイトで公表されます。
6 当事務所のサービス
今回は、広告規制の基本となる景品表示法をご紹介しました。
広告については様々な規制が存在しており、法令に加えてガイドラインや通達などが多く存在するため、専門的かつ幅広い知識が求められる分野です。
そのため、適切な助言を受けるためには、広告分野に精通した弁護士に相談する必要があるといえるでしょう。
当事務所では、常時、広告に関するご相談を受け付けており、内容のチェックやアドバイス等のサービスを提供しております。
広告についてお悩みがございましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。
石垣紀彦
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