同一労働同一賃金の最高裁判例の解説

正規・非正規の待遇格差の問題で、最高裁は5つの判決を下しました。旧労契法20条(現在は、パート・有期雇用労働法8条に統合)に関し、今後の判断枠組みを示すリーディングケースとなるものです。

大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件

10月13日判決

賞与の差 ⇒ 不合理とは言えない

退職金の差 ⇒ 不合理とは言えない

大学のアルバイト職員に関しては、賞与支給の有無が焦点となりました。

第2審(高裁)では、賞与は算定対象期間の在籍・就労への対価と指摘し、新卒正職員の6割相当の支払いを命じていました。

しかし、最高裁は、高裁判決をくつがえし、賞与不支給も「不合理とまではいえない」と判示しました。その理由として、「正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図る」目的があると述べています(いわゆる「有為人材確保論」)。

地下鉄売店の販売職員については、退職金支給が重要な論点となりました。

第2審(高裁)では、正社員基準の25%相当の支払いを命じていました。

最高裁は、上記判決と同様の「有為人材確保論」に立脚し、支給の有無の差異(非正規はゼロ)は不合理とはいえないという判断を示しました。

日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件

10月15日判決

 

年末年始勤務手当、年始期間中の祝日休、扶養手当、夏期冬期休暇、有給の病気休暇の差

⇒ 不合理

定型業務に従事する時給・契約社員に関しては、3つの裁判で、5種類の制度について格差の合理性が争われました。

最高裁は、年末年始勤務手当、年始期間中の祝日休、扶養手当、夏期冬期休暇、有給の病気休暇の5つの仕組みについて、職務内容や配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)の違いを考慮しても、旧労契法20条に違反すると判断しました。

大多数の企業で採用されている扶養手当に関しては、「相応に継続的な勤務が見込まれ、扶養親族のいる契約社員に支払わないのは不合理」と指摘しています。

上記日本郵便事件の判決では,各種手当の趣旨や目的を精査しつつ、正規と非正規の両者に当てはまるかを細かく判断して不支給を不合理としています。

 

自社での各種手当の趣旨や目的を今一度見直しておくことが重要と言えるでしょう。

ご不明な点がありましたら,是非,当事務所にご相談ください。

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藤本 尊載

玉藻総合法律事務所代表弁護士。企業側の弁護士として多数の顧問先を持つ。労務問題をはじめとした企業の法的トラブルに精通。他士業に向けたセミナー講師も務める。